東海道四谷怪談 南番(2006/03/24@シアターコクーン)

けっこう逞しいお岩さま

この劇場では数え切れないくらい芝居を観ているが、初めて2階席に座った。センター前から2列目で、傾斜が高いので前の人の頭が邪魔になることもなく、ストレスフリー。失敗はオペラグラスを持っていかなかったこと。コクーンくらいの広さなら大丈夫だろうと思っていたら、けっこう遠いわ。
で、四谷怪談南番。想像していたよりフツーだった。もちろん一般的な歌舞伎座ではあり得ない演出や照明などはたくさんあるが、昨年の桜姫がかなりアバンギャルドだったと思うので、それと比べてって話で。これまでのコクーン歌舞伎の集大成とのことだけれど、んなことこっちには関係ないしさ。

  • 橋之助が悪人を演るのを見るたびに落ち着きの悪い思いをする。殊に色悪となるとその思いはさらに強くなる。今回もさほど期待していなかったのだけど、思ったより良かったんだわこれが。ふと思い返すと、昨年11月の国立から今月のコクーンまで5ヶ月間、橋之助を見ない月はなかったことに気づいた。慣れたってこと?ただ、やっぱりどうしても、いい人がワルぶってるように見えちゃうのよね、時々。
  • お熊登場時、誰が演ってるんだかわからなかった。「淡路屋!」と声がかかって、「え、笹野さん?」とびっくり。さすが。
  • 亀蔵、好き。なんでかわからないけど、好き。おもしろおかしい役もいいけど、今回みたいな善人とは言えないけれど悪党でもない、小市民的な役柄をもっと見てみたい。
  • 勘三郎、大奮闘。すごい体力精神力だと思う。そう思いながら見ているせいか、お岩さまもバイタリティに溢れて見え、幽霊になったのも恨みからと言うよりは生命力の強さ故に思えてしまう。
  • 扇雀七之助女形の影が薄い。パンフレットを見ると、北番ではそれぞれもっと登場する、のかな。
  • 本水を使っての立ちまわりや、一歩間違えばドリフになってしまうような雪。素直に「おおおー」と感嘆。
  • 悲劇と喜劇は紙一重とはよく言われるが、ほんにその通りであることよなあ。
  • 昨日「初めて切り口上を見た」と書いたが、今日も切り口上での幕だった。