團菊祭五月大歌舞伎昼の部 千穐楽(2006/05/25@歌舞伎座)

江戸の夕映え

ふむふむ、海老蔵菊之助松緑、それぞれのお祖父さん達への当て書きの戯曲なんですか。その中で実際に見たことがある(らしい)のは二世松緑だけ。現松緑はお祖父さんとは全然違うキャラ(ニンが違う?)だと思うのだけれど、要領よく世間を渡っているようで、かつては武士であった芯を失っていない大吉にぴったりはまっていた。こんなに良い役者さんだとは知らなかったさ。菊之助とのペアも、ポンポン言い合う場面でも、どこかしっとりとした空気があったりして、見ていて凄くいい気分になれた。

雷船頭

もひとつ松緑。この人の踊りってなんだかやる気なさげに見えることが多くて、「家元さんってこういうものなの?」なんて思っていたが、今回はとてものびのびとしているように見えた。江戸の夕映えの印象が残っていたせいなのか、本当に良かったのか、カモメにはわからないけど。

外郎売

対面物は舞台上が華やかで、いつもどこを見ていいんだかと迷ってしまう。しかしさすがに今回は五郎に釘付け。大きさというか立派さのある役者は他にもいるが、あのおおらかさは誰にも真似できないんだろうなと思う。ともあれ復帰おめでとうございます、な幕。あ、萬次郎がキレイでびっくりした。

権三と助十

最後の大家さん結婚ネタも面白かったんだけど、何と言っても時蔵。二幕目、夫婦喧嘩の際の転がりっぷりに驚愕。例えば福助なら、あれくらい派手に転がってもブラボー!な気分で見続けられる。でも時蔵だよ。なんの役でも品の良さを失わず、お姫様がいちばん似合う(とカモメは思う)時蔵が、あれだけ見事に転がり落ちるとは。なんかもうドキドキしちゃって、一瞬集中が途切れた。一幕目で大家さんに言われて奥に縄を取りにいき、「これはいりませんか?」とロウソクも一緒に持ってきたり、とにかく今まで持っていた時蔵のイメージが音を立てて崩れた芝居だった。いや、惚れ直しちゃったんだけどね。