五月大歌舞伎夜の部(2006/05/23@新橋演舞場)

宙乗りがあるので2階最前列と迷ったが、無知からの思い違いで、初めて「花横」を取ってみた。花道での派手な見栄はあまりなかったけど、迫力が違うなぁ。ただ、ホコリに弱いカモメ、鼻がムズムズするのには参った。

増補双級巴 石川五右衛門

吉右衛門、今月の三役の中でいちばんこれが好き。難しい筋もなく、吉右衛門の立派さにただただうっとりしていたら終わってしまっていた。相対する久吉が染五郎っていうのはバランスが悪い気がしたが、芝居が始まると特に気にもならずに「こういうもの」として楽しめた。にしても吉右衛門、見れば見るほど好きになるわ。

京鹿子娘道成寺

新米歌舞伎ウォッチャーのカモメ。道成寺には道行がついているものとばかり思っていた。歌舞伎座芝翫一世一代の花子をたまたま見ているんだけど、その時もあったと思うの(あやふや)。福助好きだし、七三の横で懐紙ゲット!とまでは思わないけれど、花道のすぐそばで見たら楽しいかなと思ってチケットを取ったら、道行ナシだっていうじゃないですか。なんでも「竹本連中」とクレジットされていなければ道行はないんですってね。常識らしいですね。ひとつ賢くなりましたよ、ええ。
で、肝心の舞台なんですけど。
とてもキレイだったと思うの。でも道成寺ってああいう踊りだったっけ。直近で見たのが玉三郎菊之助の二人道成寺で、あれはあれで特殊バージョンでしょ。歌舞伎チャンネルで勘三郎襲名時のを見たけど、実際に生で見たのは芝翫まで遡ってしまうので、はっきりと覚えてない。ただ、芝翫さんとずいぶん違うのね、ということだけはわかった。カモメは福助の持ち味である生々しさが好きで、きっと花子も生々しく情念に溢れたものになるんだろうと思っていたのよ。実際生々しくはあったんだけど、どこかあっさりしていて、道成寺は「様々な女を踊りつつ次第に鐘への執着が高まって行く」という踊りだと思っていたカモメには???な印象しか残らなかった。けっこうがっかり。
にしても、筋書を改めて見てみると、道成寺を踊る人って偏ってませんかね。時蔵を見てみたいのに、今まで1回しか踊ってない。何か決まりでもあるんだろうか。
そうそう、小坊主さんたち、やっぱり種太郎が群を抜いて良かった。年齢が他の子達より上ってこともあるんだろうけど。

松竹梅湯島掛額 吉祥院お土砂 火の見櫓

お土砂、あまりにくだらなくて笑った(褒めてる)。歌舞伎にもこういう、なんの風刺もなく笑うための芝居があるのね。
初めのうち吉三郎の様子が『決闘!高田馬場』の中津川を彷彿させて苦笑い。となると、吉三郎に迫る亀治郎のお七はホリかというとそういうわけでもなく、ホリほどのしたたかさのない一途で天然なお嬢さん。いい組み合わせのカップルだと思う。
後半はうって変わって、ひたすら亀治郎を(が?)楽しむための幕。なんでも出来るんだろうな、この人。
ところで「チッチキチー」って、何だろう。

その他感想〜

  • 信二郎。すっきりとした二枚目なんだけど、これといった印象がないという、カモメ的には橋之助とカブる役者だったが、『ひと夜』といい『お土砂』といい、いい味出してたなあ。
  • 夜の部の芝喜松。腰元、福助の後見、お杉。大変だろうなあ。
  • 花道のすぐ側で見上げていると、遠目にはキレイに見える女形さんもアレだったりするものだなあ。それでも芝のぶちゃんはかわいいなあ。