通し狂言 曽我梅菊念力弦(2006/01/26@国立劇場)

いい男

昨日、歌舞伎は他の演劇ほどアンサンブルが重要でないのかもしれないと思ったと書いたが、撤回。ひたすら主役を華やかに見せる演出であっても、力のある役者ならば調和の取れた舞台を創るんだ、というごくごく当たり前のことに気づいた本日の国立。芸歴は言わずもがな、劇団を持ち自分で演出をする菊五郎と、ひよっこ七之助を比較するなんていう恐ろしいことをしているわけではなく、単純に己の不見識を恥じているカモメであります(軍曹調)。早とちり勘平と粋な六三郎。極悪徳次郎、役のハラ(って言うんだと思うんだけど)は違えど、いくら早とちりとはいったって、周囲を見ずにひたすら突っ走るだけじゃ芝居にならない。

  • 菊五郎。「いい男だねぇ」。粋すぎて元武士っぽくない感じもしたけど、いいや、そんなこと。昔はよく女形もやっていたけど、最近はやらないんでしょうか。
  • 菊之助に貫禄が出てきたように思う。立女形!というか、自信を持って芝居をしている印象。色っぽい場面でも清潔感があって好きなんだけど、この人って、とても美しく見える時とそうでない時の差が激しい。しかし惚れっぽい姉妹だな。
  • 松緑、筋書の写真が『あたしンち』のお母さんみたいなんですけど。パックのために髪伸ばしてるのかな。自分をカッコ良く見せようとか考えないのかな。周囲は何も言わないのかな。ミステリアスな人だ。
  • 松也の「俺はとりわけめでたい」の時、この時期にこの台詞って辛いんじゃないかな、稽古中はもっと辛かったろうな、と、余計なことを考えてしまった。おマヌケなぼんぼんが次の幕で化粧坂の少将になり、すまして座っているので笑ってしまった。
  • 岡村研佑くんと清水大希くんの区別がつかなかったカモメ。それぞれ名前が変わってわかりやすくなった。えっと、今日見たのは研佑くん(……だよね?)。
  • 手拭いを取り損ねたカモメにとっていちばんのお年玉は、亀蔵セミヌードだったりする。
  • 今月は歌舞伎座で鼠、浅草で猪、国立で犬。動物月間だった。
  • 歌舞伎座は上方で心中で子殺し、浅草は五、六段目だったので、やっと正月気分のお芝居を観ることができた。もっと「お正月!」って時期に行けばよかった。