新春浅草歌舞伎第一部(2006/01/25@浅草公会堂)

加賀鳶

鳴神

お年玉で勘太郎が「キャリアウーマン」と評した雲の絶間姫。確かに仕事のためならカラダも使うバリキャリなんだけど、この『お仕事』を成功させたら好きな男に会わせてもらえるというのが彼女の原動力なんじゃないかとカモメは思っている。去り際彼女は、命令されて仕方なく騙したんですと謝るが、「本当かぁ?恋人に会いたくてけっこう乗り気だったんじゃないのぉ?」と、つい心の中で突っ込みを入れてしまうのが常。しかし亀治郎の絶間姫、「任された仕事は完遂します、ええ絶対」といった意志が見えて、今まで見た中でいちばん偏差値が高そうな絶間姫だった(高貴さって点では物足りなかったけど)。正直、絶世の美女というには無理がある亀治郎だが、そこはそれ。ホント上手いわ、この人。「寒うなったり、暑うなったり」や「坊さんを夫に持つは嫌」のあたりの間や調子が絶妙。変に過剰な芝居をしないところがいいよな。
対する獅童、予想よりずっと良かった。まぁこの人の場合、観客として期待するハードルがそんなに高くないんだけどさ。上人の生真面目さとは感じたけれど、品格というか重厚さに欠けるかな。それがないと「破戒した」という開き直り(?)や、酔ってからの無邪気さが活きないと思うんだけど。そういうのって年齢を重ねないと表現できなかったりするのかしら。

仮名手本忠臣蔵 五段目・六段目

獅童同様、カモメ的には期待値がさほど高くない七之助獅童の鳴神は「こんな感じかな」と想像ができたが、七之助の勘平ってのは想像が難しく、最初は見ていて少々違和感があった。で、どうだったのかというと、五段目こそ段取り感が強かったものの、六段目は確かに彼なりの勘平だったと思う。声量のある役者な上に、芝居が進むにつれてどんどん役に入り込んでいくので、ただ喚いて叫んでいるだけのように見える。その結果、芝居のアンサンブル*1としては上々とは言い難い出来だったのだけれど、周囲を見ずに突っ走っちゃったのが勘平だし、だったらこういう勘平もアリなのかな*2。初めてお人形さんチックでない七之助を見た気がする。今後彼を見る時のハードルの高さを少し上げようと思った。ただ、「勘平役者!」と声が掛かっていたが、いくらなんでもそれはダウトだと思う。
勘太郎のおかる、情が深そうで健気で、無難だった。どうせ彼のおかるを見るなら、気丈な七段目を見たいものだなっと。

*1:歌舞伎ってのは主役を見せる芝居なんだろうから、他の演劇と違ってアンサンブルは重要でないのかもしれない。でも。

*2:あくまでも20代そこそこでの初役であるという条件下での話だけど。