二月大歌舞伎夜の部(2006/02/14@歌舞伎座)

kamome142006-02-14

小判一両の時、1階下手側後方に「あたしもう帰るんだから!」と騒々しいババア老婦人がいた。しばらくして「自分の席に行くのよ!」と係員を振り切ってずかずか進んでいた人と同一人物?「最近の若い者は」とは良く言われることだが、こと歌舞伎座においては、若者よりも年寄りの言動の方が目に余ることが多いと思う。上演中ずっとコンビニ袋をガサゴソしていたり、連れとお喋りしていたり、終始前傾姿勢だったり。ここはあんたんちのリビングじゃねえ!と言いたくなることは数知れずある。母数が違うから当然っちゃあ当然なんだけど。

梶原平三誉石切

幸四郎って、やっぱりよくわからない。時代より世話の方が好きかも。歌六芝雀の父娘が良かった。芝雀ってなぜかいつも印象が薄いんだけど、今回はすごく惹かれた。薪車が男前だった。

京鹿子娘二人道成寺

もお鳥肌立った。踊りが上手いとか上手くないとか、そういうことはカモメにはわからないし、考えなくてもいい気がした。二人で踊る道成寺自体が初めてなので、花子桜子バージョンとどう違うのかすら知らない。鐘を睨む様子が、玉三郎の「この恨み末代までも」といった思い入れに対して、菊之助にはそれほどの凄みがなく、どこか哀しげ。清姫の亡霊である菊之助花子の鐘に対する気持ちは、恨みもあるけれど哀しみの方が強い。しかし自分でも気づいていない怨念に突き動かされている。なんていうのかな、『清姫の亡霊』を菊之助が、『清姫の(亡霊の)怨念』を玉三郎が演じているように思えた。菊之助花子の中に玉三郎花子が存在しているような。しっかし、玉さんに睨まれたら心臓止まるだろうな、きっと。今まで舞台写真って買ったことなかったんだけど、買っちゃった。2枚も。
そうそう、延夫のバレンタインデーにちなんだ舞づくし、楽しかった。噛みまくりだったけど。

人情噺小判一両

昼とは逆で、町人の菊五郎と殿様の吉右衛門。カモメ的にはこっちの方がしっくりくる。田之助の浪人も松也の茶屋娘も良かったし、それぞれの芝居を見るって意味ではとても楽しかったんだけど、なんかすごく後味の悪い物語だった。殿様のために命を捨てるとか我が子を犠牲にするとかだったら、まあそんな時代もあったのね、で納得するけれど、それとは違うイヤな気分。凧を返さない子供にイヤな気分になり、町人に情けを受けたと自害する浪人にイヤな気分になり、それを受け入れて自分がお前の父親の仇だと言う町人にイヤな気分になった。せっかく吉右衛門菊五郎の組み合わせなんだから、もっと明るい気分で劇場を出られる演目で見たかった。