十二月大歌舞伎夜の部(@歌舞伎座)

すすき

幕間中売店をうろうろしていたら、こちらをチラチラ見ている同世代の女性がいた。なんとなく見たことあるようなないような顔。むこうも同じ思いなようで、お互い目を合わせないように様子を窺いつつ数分。結局記憶を手繰り寄せることが出来ずじまいで席に戻った。終演後、そんな出来事はすっかり忘れて地下鉄に揺られていて、唐突に思い出した。子供の頃通っていたバレエ教室で一緒だった子だ。名前すら思い出せないけど、間違いない。よく思い出したと思うべきか、そんなこともすぐに思い出せないのね、と思うべきか、どちらだろう。

重の井

湿度の高い物語を、湿度の高い役者が、実の息子と演る。歌舞伎って、普通の芝居では考えられないくらい派手な表情、表現をする演劇だけど、それにしても福助ってとても表情の豊かな人だ。あの生々しさが好き。児太郎くんもしっかり芝居していて感心した。って、もう十一歳ですか。ふーん。七之助がかわいらしかった。

船弁慶

重の井のベタベタ感から一転して乾いた質感の船弁慶。新十八番ではなくてお能の歌舞伎化だそうで、まさに玉三郎ワールド。船弁慶と言えば幕外の引っ込みと思いこんでいるわたしには高尚すぎでした、はい。つまらないわけじゃないんだけど、音楽が美しいし、軽くゴハン食べた直後だしで、気を抜くと眠りそうに……。
段治郎で見てみたかったけど、弥十郎弁慶で良かったのかなって気もする。義経ってわたしには品のあるオカマに見えることが多いんだけど、薪車がまっとうにすっきりと男前だった。

松浦の太鼓

お茶をいれる勘太郎お縫の仕草の優雅さに見とれていたら、舞台の真ん中で行われている事に乗り遅れた。あ、なんか小ギャグがあったのかな、とかその程度だけど。わたしの持つイメージ通りの橋之助を見るのは久々で、なんだか安心して見ていられた(でも声は枯れてた)。勘三郎の一本気な殿様、見ていて楽しい。あまり殿様っぽくないけど、まあ、ああいう殿様もいたのかもしれんな、と。そうそう、勘太郎女形のときの顔ってあまり好きじゃなかったんだけど、なんかキレイになった?ファンの欲目?
なにはともあれ、弥十郎さん大活躍の夜の部でありましたとさ。