シネマ歌舞伎『野田版鼠小僧』@東劇(2004/12/24)

kamome142004-12-27

昨年8月に上演された実際の舞台は観ていない*1。今回はそれの映像版。ぴあの試写会に何気なく申し込み、当選した。今まで当たったためしがないのにと不思議に思ったら、日時が12月24日20時って。そりゃ応募者も少ないだろう。日が日だけにつきあってくれそうな友人も思いつかず、「クリスマスだし。サンタ出るし」と歌舞伎にも小劇場にも関心のないオット*2を連れて行った。
以前は歌舞伎は年に5〜6回、小劇場は20本程度観ていたが、今は小劇場系の演劇を年に数回程度。特に夢の遊眠社の中期(?)には一公演を何度も観る機会があったので、野田さんの芝居には思い入れがある。
1時間50分後、ああ、これは歌舞伎役者と歌舞伎座という舞台を使った野田演劇なんだな、という印象で見終えた。世話物(この作品をこんなふうにカテゴライズしていいものかはわからないが)なのに大円団で終わらないのは歌舞伎の性質とは違うとような気がする。そして何より感嘆したのが、歌舞伎役者の、なんて言うんでしょーか、芸の幅の広さというか奥行きの深さというか引き出しの多さというか。
前述の通り歌舞伎素人なもので芝居の上手下手はよくわからないのだけれど、野田脚本特有の言葉遊び(とベタなギャグ)をみな*3絶妙の間とテンポで演じていて、ヘタな小劇場系の役者よりよっぽど見応えがあった。あああ、去年面倒がらずにチケット取る努力すればよかった。


んでも、「シネマ歌舞伎」というのはどうなのだろう。
TVで放映される芝居を録画する、DVDを買うなどの行為は、わたしにとっては「記憶が薄れたときのため」だったり「あのシーンのあの役者のあの台詞をいつでも見られるようにするため」する。だってライブにかなうものはないもん。芝居好きはたいていそう思っていると思う。
地方でなかなか舞台を観ることができない人たちにはいいかもしれないし、歌舞伎に興味はあるけれど敷居が高いと思っている若い人たちにもいいかもしれない。大きなスクリーンならではの臨場感は得難い。でも今はBSでも時々放映があるし、スカパーに専門チャンネルがある。映画はやがてDVD化されるという現実を考えると、どれだけ需要があるんだろうという気がする。
とはいえ試写終了後に勘九郎丈が挨拶で言っていたように「今後も続けていければと思う。何も決まっていないが、たとえば本公演が終わった後カメラを何台も入れて、それを了承してくれることを前提に1000円くらいの入場料でお客さんに入ってもらうなんてことができれば……*4」ってなことが現実になったら歌舞伎ファンの裾野も広がっていくのかな(ただ歌舞伎ファンって新規ファンを嫌う傾向がある気がする。ぎゅんぎゅんする。気のせい?)。今は常連さん8割+わたしのような歌舞伎観光客2割って感じで、あまり居心地の良い空間ではないのよね。

*1:ついでに勘九郎×野田秀樹第一弾だった『研辰の討たれ』も未見

*2:夫。配偶者。husband

*3:アレな人も、いるにはいたが

*4:遊眠社が昔「この日はビデオ録りなので特別料金」ということをやっていた。一回まるまるだったか、カメラが邪魔であろう席だけだったかは覚えていないけれど